昭和40年度看護教育研究会夏期講習会集録
医の理念
澤瀉 久敬
1
1大阪大学
pp.20-28
発行日 1965年12月1日
Published Date 1965/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905533
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真の医学とは何か
医学とはどういうものであるかということでありますが,それにたいして「医学とは生命現象を自然科学的に研究する学問である」という一つの考えかたがあります。それはひとことで申し上げると,医学は生理学であるという主張であります。ただ,この場合の生理学とは広い意味の生理学であって,つまり正常な,ノーマルな生理現象も,異常なアブノーマルな生理現象をも含めての生理現象であります。したがって,たとえば「小児科学は小児の生理と病理を含めての生理現象を研究するものである」という意味であり,病的現象も含めてすべての生命現象を研究するもの,それが医学であるというのがこの主張であります。
しかし私はこのような考えかたに同感することができません。なぜならば,医学は単に生命現象を研究する学問ではなく,その本来の目的は病気をなおすというところにあるからだと考えるからであります。もし医学が単に生理学であるならば,ことさら「医学」と呼ぶ必要はないのであつて,「生理学」ということばのほかに「医学」ということばがあるということは,「医学」と「生理学」とは別であるということを意味しているのであります。
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