特集 ディスポーザブル検査器具
ディスポーザブル(Disposable)の理念と条件
斎藤 正行
1
1東大分院・生化学
pp.738-740
発行日 1969年9月15日
Published Date 1969/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906511
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Disposableの登場
物質文明のめざましい発展とともに人間の価値が再認識され,向上してきているのが現代の特徴かと思われる.今まで人間はその価値以下の仕事に,あたかも野牛のごとく黙々と働き,貴重な1日1日を消費していた.しかし科学の進歩は同じことの反覆作業は入間より機械のほうがより正確かつ多量に生産できるものだということを教え,外観上大して経済的負担になっていないような人件費が,物価決定の非常に大きい因子であることを目ざめさせた.
実際,検査室を見ても,1つの検査を行なうにあたって,まず容器の洗浄,乾燥,必要によっては消毒滅菌が必要で,その準備されたものは本番の分析段階である一瞬時脇役(反応が展開される場所の提供)として使用されるにすぎない.この単なる脇役に本命に費す以上の時間と労力を投入するというナンセンスは,昔は当然とも考えられていた,それはこの前後の処置も検査の重要な一過程と考えられていたからである,そういっても,この前後の処理はほとんど分業的に,検査を行なう人と別の人が機械的に行なっており,その人件費は生活水準の向上とともに上昇し,検査技師とあまり変わらない給料でかつ得がたい存在ともなったのである.
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