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医の理念—第15回日本病院学会特別講演より
澤瀉 久敬
1
1大阪大学
pp.64-76
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202666
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医療の実際にたずさわっておられます皆さまの前で,私が「医の理念」について申し上げるなどということはまことに僭越な次第でございますが,会長萩原先生のお言葉に甘えまして,日ごろ考えておりますことを述べさせていただきます。
医学とは何か,という問いに対して,「医学とは生命現象を自然科学的に研究する学問である」という一つの考え方があります。それは医学とは生理学であるという意見であります。もちろんその場合の生理学とは広い意味の生理学でありまして,正常の生理現象も異常な或いは病的な,生理現象も含めての生理学であります。しかし,私は医学は単に生命現象を研究するものではなく,病気を治すということをその本来の目的とすると考えるべきではないかと思います。「生理学」という言葉のほかに「医学」という言葉があるのもそのためではないかと思います。「医学」は「医の学」であるということほど明らかなことはないはずでありますのに,ともすると医学と生理学とが同一視されるのであります。
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