教育の歴史・3
西洋中世の教育
高倉 翔
1
1大阪学芸大学
pp.45-49
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905323
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西洋の中世
一般に西洋史では西ローマ帝国の崩壊した5世紀ごろからルネッサンスにいたる約一千年の時期を中世とよんでいる。中世は文字通り古代から近世への中間期ではあるが,中世を,そして中世の教育を,紋切型の中世観でとらえるのは当たらない。すなわち,中世は一千年にもわたる古代から近世への過渡期なのであり,中世をたんに暗黒時代としてとらえたり,ローマ・カトリック色にぬりつぶされた時代と考えたり,封建制度のもつ閉鎖性というイメージでのみ理解することは正しくない。
たしかに中世の初期(5〜8世紀)のゲルマン民族大移動の時期には,古典文明の停滞や社会の無秩序状態が続き,暗黒時代の名に値するものであった(もっともこの時期は,ゲルマン民族の歴史としてみれば,いわゆる中世とよばれる段階として考えるよりもむしろ,ゲルマン民族の原始時代,古代国家時代として把握するほうが適切であろう)。しかし,8世紀にはいってゲルマン民族がフランク王国のもとに統一され,いわゆるカロリンガ・ルネッサンスの時期になると,中世世界は暗黒時代より脱却し,封建制度が整備発達するにともなって,西欧中世世界の基礎が形成された。「領主なき土地なし」といわれたように封建制度の基盤としての荘園制度が発達し,一般大衆(農民)は土地にしばりつけられた。しかし,被支配階級である農民の生活も,古代国家の時期にくらべて変化がみられた。
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