連載 社会思想史の旅・1【新連載】
中世の封建社会と思想
田村 秀夫
1
1中央大学経済学部
pp.49-53
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906094
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はじめに
歴史は過去と現在との対話である,といわれるように,現代社会で自覚的に生きようとするとき,ひとはこの対話に誘いこまれるであろう。われわれの生活する現代の世界が半世紀のうちに二つの大戦を経験して大きく揺れ動いているとき,ひとは歴史の流れが一つの曲り角にさしかかったと感じ,近代の市民社会が何らかの形で転換すべき段階に入ったと考えるであろう。現在,思想や歴史の問題が重要な意味をもってわれわれの前に現われて来るのも当然のことといえる。
このような現代の状況を理解するために,ヨーロッパの近代社会思想史の流れを辿ってみるのが本稿の意図であるが,ここで社会思想というのは,人間の生活の総体としての社会に対する人間の態度を表現したものであり,その歴史は,思想という局面からみた社会史ということにもなる。いわば「思想の社会史」ともいうべき捉え方から,ヨーロッパ近代の社会思想とそれを産み出した社会の歴史的な発展を展望してみよう。
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