教養講座 世界史の女性像・6
中世ヨーロッパの女性たち(3)
井上 一
1
1横浜市大
pp.56-58
発行日 1958年7月15日
Published Date 1958/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910650
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中世ヨーロッパの変化
前の号でお話ししましたように,ヨーロツパ中世の社会は封建制度とキリスト教会(ローマ・カトリツク教会)がさゝえとなつていました。封建制度とは広い土地を持つ領主が自分の土地を家来に分ち与え,その代りに領主には家来たちが忠誠を盡すという原則に立つものですが,申すまでもなく,土地には限りがあるため,この処理をめぐつていろいろのもめごとが起ることとなります。十字軍がキリストのお墓のあるエルサレム回復のための聖戦という目的と同時に,東洋の財宝の分捕という目的を持つていたことも前号で申しましたが,このことは,当時の領主や武士たちが先祖代々の身分の体面を保つための苦心を示すものでした。
一方中世のはじめには民族大移動の浪に洗われて衰えた都市も,ヨーロッパがある程度安定すると,商業や工業を営んで栄えるようになりました。中世のはじめには物が経済の単位となつていたのが,徐々に貨幣が経済の単位となり,都市に住む商人,手工業者は貨幣をため,戦争や浪費しか知らない武士や領主を,表面では尊敬しながら,裏面では自由に操るようになりました。現在私たちがいろいろの意味でつかうブルジヨワ》ということばは元来《都市に住む人々という意味でした。
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