特集 指導性
看護婦はリーダー—患者と看護婦の関係
栗原 泰治郎
1
1立教大学
pp.12-16
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904428
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
好きで患者になる人はいない
ふだん健康であるときは,だれも医師とか病院などというものを意識界の中心部に登場させるようなことはしていない。むしろ,全く無関心でいるか,さもなければ,「行くべき所ではない」とか「近づく必要はない」という消極的・非好意的観念で捕えている。すなわち,健康な人にとっては病院はマイナスの価値を持つ目標領域なのである。だから無意識の世界へ抑圧(repress)してしまっているのであって,日常生活のプログラムには記せられていないのである。その病院という存在が,われわれの行動範囲,意識の世界に座を占めるようになるのは,特定の状態に遭遇したときすなわち,健康を失ったとき,ないしはそのような感情に襲われたとき(これをanxietyという)だけであって,その時には,いやおうなしに接近せざるを得なくなるのである。つまり,生体の条件変化に伴って,それを取りまく生活空間の構造が変化するのである。この変化を誘起するのは病気という事実や病気ではないかという不安であって,われわれは,これらの要因によって負の領域である病院への接近をよぎなくさせられ,動機づけられる(motivated)のである。このときの病院へ接近する行動は,われわれが生活の維持のため,各人の勤務先(会社,学校,事務所)へ通う行動とは質的に異なっている。前者は,非生産的目標に向っての行動であり,そこへ行っているからといって生活水準が向上するというものではない。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.