特集 看護
看護婦と人間関係
早坂 泰次郎
1
1立教大学文学部心理学研究室
pp.319-322
発行日 1960年5月1日
Published Date 1960/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201651
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1.人間関係(ヒューマン・リレーションズ)とは
人間関係ということばはいろいろな意味をもつている。単なる複数個人の間の関係という意味での人間問の関係(インターパースナル・リレーションズ)は,社会学や社会心理学を成立させる基本的問題領域である一方,教育(親—子,教師—学生)や治療(医師—患者)の実践領域においても,とくに最近では重視されてきている。しかしながら,産業心理学や人事管理の領域でもちいられるヒューマン・リレーションズということばは特別な意味をふくんでいる。
(1)それはいわば,生産や事業のためにつくられている制度的組織の人間的半面といつた意味をふくんでいる。事業体はその存続のためにこうした制度的組織をどうしても必要とする。そして,人がかわることによつて組織の性格がひどくかわつたり,存続が危うくなつたりすることがないためには,制度はできるだけ合理的客観的につくられている必要があるが,その結果ある程度の形式化はどうしても避けがたい。課長Aと課員Bがいて,Bはその個人的能力においてAよりすぐれていたとしても,課長の位置にあるかぎりAはBを指揮監督する権限と責任があり,Bは仕事に関するかぎりはAにしたがう義務がある。この関係が恣意的に破られてしまうならばその課(およびその課をふくむ組織全体)には混乱と分裂がもたらされるほかはない。
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