編集デスク・21
人づくり
長谷川 泉
pp.51
発行日 1962年11月1日
Published Date 1962/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904296
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「道徳教育」などというといかめしいが,「人づくり」といえばややことはやわらかに聞こえる。いずれにしてもその内容はそう違ったものではないところに以下の問題がある。「人づくり」とは,本来すぐれた有能な人物をつくることの意味であるから,それ自体は教育であって,道徳教育とはイコールではない。しかしながら,目下教育のかなり重要な意味が,道徳に向けられているところに,戦前から戦後を通じての教育の担う問題の核心がある。
倫理学という学問体系がある。人間は社会的人間であるから,社会の中でどのようにしたら人間としての正しい道を踏みおこなうことができて,世の中がうまくゆくかということを考える体系が,学問としての倫理学である。倫理学の具現されるものが道徳である。だから,道徳それ自体は,人間である以上,誰でも大切に守ってゆかなければならないものであり,道義地におちるところにすぐれた社会生活は営まれないし,その中に生きる人間は不幸である。
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