臨床指導
臨床指導者はなぜ必要か
森田 松実
1
1東京衛生病院付属高看学院
pp.36-38
発行日 1962年5月1日
Published Date 1962/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904192
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はじめに
今日の看護教育は学術的に程度が高くなり,内容的にも豊富になって,多少の差はあれ,学生が相当の時間を教室内で学習に費すようになりました。これは従来の,主として臨床のみで行なわれた徒弟見習い式の看護教育に比較しますと喜ぶべき進歩であり,科学的にめざましい発展をとげつつある現代において当然のことだと思います。
しかし,この進歩は看護学生が養成期間のほとんど全時間を臨床で費した昔の時代や,また教室での学習時間数は増しても,臨床の医師と婦長が学生の教育を兼任していたその後時代に存在しなかった問題を招来したのであります。と申しますのは保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則により看護学校が以前よりも学校らしい形式をとるようになり,専任の教員が看護学生の教育に当り,病院を学生の実習場としてみるようになったときに生じた教室と臨床の分離ということであります。教室では適当な教材や器具をととのえて,いくらでも理想的なことを教えることはできますが,現実に臨床ではそれと同じことを行なっているとは限りません。そのような場合に学生は教室で学んだ理想酌な看護法と,臨床で見たり教えられたりする実際の看護との間に矛盾を感じて苦しむことと思います。また,学校で行なわれる教育と臨床実習とを連絡する何か計画がなければ,経験の浅い看護学生が看護の理論と実際とを自分で関連づけることは困難でありましょう。
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