特集 慢性疾患患者と保健婦
なぜ慢性疾患の保健指導が必要なのか—よりよい保健指導をするために
秋山 房雄
1
1大蔵省印刷局東京病院第二内科
pp.12-16
発行日 1965年9月10日
Published Date 1965/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203457
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
テーマの範囲と重点
まず初めに,ここでいう慢性疾患の範囲をきめておく必要がありましょう.慢性疾患といわれるもののうち,現在保健指導の対象とされているものは,主として循環器疾患,その中でも高血圧症と動脈硬化症で,そのほかのものとしては消化器系慢性疾患,糖尿病,貧血症などについて,わずかに行なわれている程度であります.成人病という名前の中に含まれているがこの場合には,その早期発見に対する啓蒙教育が主であって,ガンだと診断されれば医師の手に渡されて,その後保健指導を行なうことはふつう行なわれておりません.また,慢性疾患の中で,その頻度の上から,また休業日数の上からも重要でありながら,ほとんど顧みられていないものに,慢性気管支炎や,リウマチ性疾患,腰痛などがあります.今後の大きな課題の一つでありましょう.
こんな次第で,これからの話は循環器疾愚の場合に限定することをまずお許し願います.そして,この場合にも,その発病を防止することは,その発病のカラクリが不明であるため,現在のところできない相談で,当面の目標は悪化防止と,合併症の発生防止に重点をおくべきであるとわたくしは考えております.もちろん,発病についても,多くの学者によって研究され,いろいろと主張されてはおりますが,その大部分はまだ仮説の域を出ておりませんので,それをそのまま実際にとり込むには手心が必要と思います.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.