特集 現代の家族―神話を超えて
アディクション問題から見えてきた家族
米山 奈奈子
1
1東海大学健康科学部
pp.642-645
発行日 2002年9月25日
Published Date 2002/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903897
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はじめに
現代社会はアディクションに満ちた社会である.アディクションとは「やめられないとまらない状態」になってしまう嗜癖(しへき)のことを意味し,物質のみならず,行動プロセスや人間関係そのものがアディクションになりうる.私が,そうしたアディクション問題に関わることで見えてきた家族は,癒しの場であったり成長を促す安全な小集団ではなく,反対に暴力やトラウマの継承装置となる危険性を含んでいるものだった.だから,アディクション問題からの回復をすすめるには,それまでの「家族神話」や「家族維持モデル」を崩壊させることから始まる場合があると理解できるようになった.
しかしながら看護者が家族と出会うとき,家族に愛情や信頼,安全性を期待するあまり,こうした家族の抱える闇の部分を否認してきたのではなかっただろうか.理想化された家族の裏側で,何が起こっていたのか.私たちは実は,真実を見極めることを密かに恐れていたのではなかったか.そして,「混乱している家族」を暗に「機能していない家族」「コマッタ家族」「多問題家族」であると非難して,それ以上の介入をあきらめてはいなかっただろうか.あるいは,家族を崩壊させず,維持できる援助でなければならないと誤解してはいなかっただろうか.
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