特集 患者経験を通して看護教育を考える
患者の自己決定権の尊重を
患者の自己決定をどう見るか―介護領域から看護領域への投げかけ
山本 悦子
1
1東京YWCA専門学校社会福祉科
pp.954-959
発行日 1995年11月25日
Published Date 1995/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903729
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はじめに
ある老人ホームの寮母さん,寮母ステーションの横にある九官鳥のカゴに向かって「自己決定,自己決定よ!」と何度も繰り返している.私と目が合って苦笑いをしていたが,はたして九官鳥はその言葉を覚えることが出来たのだろうか,否それより覚えさせようとした寮母さんの意図は何だったのだろうか.老人ホームの職員たちだけでなく,お年寄り自身にも,自己決定の大切さを認識して欲しいと思ったからなのだろうか.
老人ホームの生活の中で,ともすれば自ら意思表示したり,選択と決定をしたりする場面を職員が意識的に作っていかなければ,気付かぬうちにお年寄りはそれらをしないで流れに任せて日々を過ごしてしまう危険をはらんでいる.九官鳥に時折「自己決定!」と叫んでもらって,両者ともに“ハッ!”と意識化させてもらうことは,なかなか素敵なアイデアかもしれない.
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