私と読書
自分をふり返る努力を課題として投げかけられる—『こころは生きている—ある看護婦とのカウンセリングプロセスに学ぶ』を読んで
中重 喜代子
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1東京女子医科大学看護短期大学
pp.694-695
発行日 1992年8月25日
Published Date 1992/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900635
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この本の著者石原文里先生と初めてお会いしたのは,1964(昭和39)年の秋でした。先生が12年間の教員生活を離れ,日本カウンセリングセンターの専任カウンセラーとなられてから4年目の頃です。人の話を聴く──事柄でなく気持を聴くということや,人のその時の気持ちに添っていくということなどは,これまでに経験したことのない学習でした。「これはとても難しい…。けれど,これは看護の仕事を続けていく上で基本となるものらしいぞ」と思ったことが,石原先生とのおつき合いの始まりでした。
先生はその後,私たちの自主的なグループの勉強会にお呼びすると快く応じてくださり,根気よくつき合ってくださいました。仲間の中には,これを契機にセンターのトレーニングコースに通い始める人も増えていきました。先生が雑誌「看護」に,「カウンセリングに学ぶ」と題した文を連載されたのもこの頃でした。「人の話を“聴く”ということは命がけの仕事です」と言われ,いつも自分に厳しくこの道を歩み続けられる先生に,私たちは強く影響され,そして直接間接に支えられて来たのです。
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