特集 看護学生の論文―大賞・入選論文の発表―看護のこれからを担う学生たちから寄せられた22篇
看護師の笑顔とユーモアについて
河田 紘子
1,2
1千葉大学看護学部
2千葉市立青葉病院看護部
pp.625-626
発行日 2003年9月25日
Published Date 2003/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903475
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「おはようございます」と笑顔で病室に入る.卒業研究の情報収集のために1か月間通った老人病院でのことだ.受け持った患者さんがいたのは6人部屋.私は,毎朝そうして6人の患者さんに挨拶をしていた.同室の患者さんのうち一人は脳の機能に障害があり,言葉を話すことも理解することも困難な状況だった.しかし,私の笑顔に対してにっこりと笑い返してくれた.その患者さんは私の受け持ちでなかったし会話もできなかったのだが,1か月後にはなんだか仲良くなれたような気がしたのでとても不思議だった.
その後,私は大学の図書館で論文に使えそうな文献に目を通していた.その文献のひとつでアルフオンス・デーケンの『高齢者の生きがいとユーモア』の中の一文に驚いた.「言葉は通じなくても,笑顔は無言のコミュニケーションを形成する」と.私は思わず「こういうことだったんだ……」とつぶやいてしまった.私があの患者さんと仲良くなった気がしたのは,自然に笑顔のコミュニケーションをとっていたからなのだと思った.
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