特別論考
患者の状況に応じた看護マネジメント―患者の疾病認知と適応に関する分析を通して
一戸 妙子
1
1北海道社会保険看護専門学校教務部
pp.1080-1089
発行日 2002年12月25日
Published Date 2002/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903333
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はじめに
わが国においては,疾病構造の中心が炎症性疾患の「感染症」から,生活習慣要因がその発症や進行に関与しているとされる心疾患・脳血管疾患・悪性新生物などの,いわゆる「慢性疾患」(以後,慢性疾患と称する)へと大きく変化して以来,医療従事者と患者の双方は,生活習慣をも医療管理に含むという病院機能の拡大に伴う新たな問題を認識せざるを得ない状況となってきている.
慢性疾患の多くは,病因が外から入り込んだものではなく,遺伝的・家系的要素や生活の仕方にもその一端があることから,かつての感染症とは異なる医療管理が要求されている.つまり医療者は,患者の社会的責任免除を支持するのではなく,むしろ,患者の望む社会的活動を支援・支持する役割を果たさなければならなくなった.それは,医学的視点中心の医療管理(medical treatment)に加えて,心理学的・行動科学的視点をも視野に入れた医療管理(medical administration)が求められているのである.すなわち,医療管理の領域が時間・空間ともに拡大していることが推察できる.しかし,医療においては自然科学的な把握が長いこと習慣化していたこと,医療のサービス的側面が強調されて日が浅いことなどから,心理学的・行動科学的アプローチによる医療管理上の患者の問題把握は十分とはいえない.
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