連載 私のすすめる本・10
あまのじゃくのススメ―「心の時代」の前提を問い直す
宮元 博章
1
1兵庫教育大学教育基礎講座
pp.794-795
発行日 2002年10月25日
Published Date 2002/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903284
- 有料閲覧
- 文献概要
心のケア,心の癒し,心の傷,心の闇,心の教育,こころ,ココロ……と,近頃,何かと言うと「心」なのである.それに関連して,カウンセリング,何とかセラピー,何とかチルドレン,脳の男女差,「困った人たち」,EQなどなどの,いわゆる「心理用語」も花盛りだ.そうした傾向は「自分」という言葉にも表れている.自分らしさ,自分探し,自己実現,自己決定,自分で考える…….そう言えば,某パソコンのCMで,ある青年の部屋に唐突に入り込んできた謎の中年男が,青年の作ったホームページをのぞき込んで,「自分,自分,自分……みんな自分が好きなんだ」とつぶやくのが妙に印象に残っている.パソコンを売ろうっていう会社が,自作ホムペ作って悦に入っているヤツを皮肉っていいのか?しかし,こういうイヤミを言うヤツもたまには必要なのだ.
看護の領域でも「こころの看護」が重視され,また看護師も自らの心をよく理解し,人間関係の問題や,仕事のトラブルや,ストレスを上手にマネジメントする能力が強く求められているのではないか.それのどこが問題なのだ.良いことではないか.その方法を手っ取り早く教えてくれる本を紹介してくれと言われるかもしれないが,その手の本は掃いて捨てるほど転がっているので,むしろ今回はあまのじゃくに,そうした「こころ」主義の前提を改めて俎上に乗せ,問い直しているような本を何冊か紹介したい.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.