連載 私のすすめる本・7
セクシュアル・ハラスメント
小柳 しげ子
1
1相模女子大学
pp.570-571
発行日 2002年7月25日
Published Date 2002/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903240
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「お前,殺されるかもしれへんで」という本文中の見出しが,読みすすむうちに,実際にあり得たかもしれない…と思えてくる.横山ノック前大阪府知事が,選挙運動中に起こしたセクハラ事件で有罪になり,知事を辞職したことは,まだ記憶に新しい.最初に紹介するのは,この事件の被害者である田中萌子著『知事のセクハラ私の闘い』(角川書店)である.当初,世間は「なんでこの時期に!」「そんなことするわけないだろう」との反応で,対立候補の陰謀か,あるいは,せいぜい知事がお尻をちょっと触った程度だろうととらえられていた.
裁判で被害の生々しい現実が明らかになるにつれ,衝撃が走った.だが,当時,福祉の仕事に夢を抱いていた女子学生の,本当の“声”は聞かれないままだった.この本を読むと,事件の経過を通して,あの時どんなことが起こったのか,セクハラの体験が,被害女性をいかに傷つけ,多くを奪い取ったかということがよくわかる.
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