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1年は早いもので,本連載も今回が最後となった.「性の健康」(セクシュアル・ヘルス)には,まず「性を楽しく語ることができる場作りから」という方針のもと,そもそもセックスとは何か,性器はどうなっているかということから始めて,なぜコミュニケーションが重要なのかを考えてきた.避妊や性感染症,性暴力についても,体験談を読んだり,映像を見ることで「他人事」ではなく,「自分の事」として感じることができるように進めてきた.また,インターセックス,性同一性障害,同性愛,両性愛に関しても,こういった人たちが「特別な人」だから「取扱厳重注意」にするのではなく,こうした多様性こそが,私たち人間の本来の在り方であり,誰もがそうした多様なグラデーションのどこかに位置していることを確認してきた.最終回では,改めて性(セクシュアリティ)とは何かを問い直し,セクシュアル・ヘルスについて総括してみたい.
近頃「セクシュアリティ」という言葉を聞く機会が多くなった.同性愛のコンテクストでは,セクシュアリティと言うと,異性が好きか,同性が好きかという「性的指向」と同義に使われることも多いが,それはセクシュアリティが意味するものの一部にすぎない.WHO(世界保健機関)の定義では,「生涯を通じて人間の存在において中心的な事柄であり,セックス(性別/性交),ジェンダー・アイデンティティ,性別役割,性的指向,エロティシズム,快楽,親密さ,生殖を包含するものである」とされている.しかし,これでは何でもありのようで,ちょっとわかりにくい.セックスなど身体に関するものもあれば,親密さというように対人関係に関するものも入っている.どうしてこれらが同じ言葉で括られるのか,疑問に思われる方も多いだろう.
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