連載 私のすすめる本・3
「家族」の現在を読み解く
春日 キスヨ
1
1安田女子大学(社会学)
pp.212-213
発行日 2002年3月25日
Published Date 2002/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903162
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「あのときが時代の転換期だった」という明確な認識をその時代を生きる人たちは持っていないことが多い.しかし,現代日本の家族こそ転換期のまっただ中にあるといってよいだろう.選択的夫婦別姓制度の国会上程,専業主婦を優遇してきた税や年金制度を個人車位のものに変えるべきという動き,近年相次いで法制化された「児童虐待防止法」「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」の成立等々.こうした動きに通底しているのは性別役割分担にもとついた家族を前提としてつくられた社会の見直し,「家族」という場においても個人に対して行使される暴力に対しては公権力が介入し個人の権利を保障しようという個人単位の社会の方向へ日本が大きくシフトしつつあるという事実である.
こうしたなか地域で保健婦や看護婦に求められる役割も大きく変化してきている.私自身,地域の保健センターでのケースカンファレンスや勉強会に参加し続け,看護大学などで講義をするなかで,援助者としての看護職者が地域の家族とより良く・より深く関わっていくために必要な力・知識とは一体どのようなものだろうかとこだわり続けてきた.そしていま,援助者自身が自分の持つ家族観を相対化し相手の家族観を受け入れていく力,さらに「家族愛神話」に囚われず「家族の闇」を見極めそれに対処していく力の2つの力が必要ではないのかと考えている.
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