連載 論より生活・8
許し得ず
頼富 淳子
1
1(財)杉並区さんあい公社
pp.720-721
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902345
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糖尿病の悪化で寝たきりとなったAさんのオムツ交換を頼まれた.しかし,訪問介護が始まる前にさらに病状が深刻になり,入院されてしまった.その2か月後にAさんは病院で亡くなり,85歳の妻のBさんが1人残された.Bさんから退会の書類が公社に届いた日に,追いかけるように電話が入り,「やっぱり会員でいたい.自分にはホームヘルプは必要ではないが,会員の特典である月1回のコーディネーターの訪問をしてほしい」とのことであった.
Bさんはもともと華奢な体格で病弱であったが,現在特に大きな病気はない.骨粗鬆症のため腰痛があるが,室内をゆっくり伝い歩きでき,身のまわりは辛ろうじて自立している.浅草の商家に生まれ,浅草育ちで,老いたりといえども,肌のきれいな笑顔の涼やかな人で,おそらくは何とか小町と呼ばれたことだろうと想像する.
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