海外文献にみる看護教育学研究
家族の側面からみた長期療養型施設での終末期ケア
竹熊 麻子
1
1佐賀医科大学医学部看護学科
pp.272-273
発行日 2000年4月25日
Published Date 2000/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902239
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研究の背景と研究方法
医療施設における終末期と死についての初期の研究では終末期にある患者とその家族とのコミュニケーションの重要性が論じられていたが,より最近の終末期と死についての研究においては,病院という場にとどまらず,終末期ケアを行う場所として長期療養型施設も研究の対象に含められるようになってきた.この段階の研究での結論では,長期療養型施設の職員は入所者の家族が経験した不快な体験についてもっと繊細になり注意を払う必要性を示している.家族の経験した不快な感情は,高齢者の療養のみにとどまらず,喪失体験に大きく影をおとすことが指摘されている.長期療養型施設において不快な体験をした家族は,より深刻な悲嘆を経験し,後に記憶のなかで不快な感情を覚えることが示された.さらに,スタッフの入所者へのアタッチメント,すなわち入所者の代理家族の役割について,またスタッフにとっての入所者の死による喪失体験についても研究が行われている.
長期療養型施設が一般の病院と異なる点は,その場所が多くの入所者にとって「家」であるということにある.このことから,終末期にある入所者の家族に対して支援を行うことの重要性は,過去の研究結果をみても重要な課題として指摘されていることである.しかしながら,肉親の喪失へのコーピングに際し家族がもっとも助けになると認識している事柄については,よく知られていないのが現状である.
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