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はじめに
長期療養施設・介護施設には様々な形態が存在している。代表的な形態としては,住居のみ提供される住宅系施設(必要度に応じて介護サービスなどを外部から取り入れる場合もある),グループホームなどの福祉系施設,そして,特別養護老人ホームなどの介護保険施設に大別される。それぞれ看護師や医師の配置に数的差異があり,医療資源も施設ごとに大きく異なる特徴を有している。また,施設において最も多い職種は医療職ではなく,介護職であることも耐性菌対策を検討するうえで考慮すべき点である。厚生労働省による『平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況』1)によれば,介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が7,891施設と最も多く,次いで介護老人保健施設が4,322施設と報告されている。したがって,本稿では長期療養施設・介護施設の中で多くの施設数・入居者数を抱える特別養護老人ホームおよび介護老人保健施設に焦点を当てて,ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌・CRE(CPE)[カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌)]の対策を現場目線で考えてみたい。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設の医療側面における特徴
日本における長期療養施設・介護施設には様々な形態があり,医療側面におけるマンパワーなどに相違がある。図1,表1に医療側面から見た長期療養施設・介護施設の社会的位置付け,および人的資源を示す。同じ長期療養施設・介護施設であっても,医療面における資源は施設ごとに異なっている。なかでも介護老人保健施設は最も病院に近い性質を有しており,医療法上は医療提供施設に位置付けられている。一方で,特別養護老人ホームは,医師は非常勤であり,看護師も日中のみの常駐となっている。また,長期療養施設・介護施設で勤務する職種の多くは,医療の専門家ではなく,介護の専門家であり,日常業務のほぼすべてが介護業務であることも考慮しておく必要がある。このように施設の特性により,施設ごとに医療資源が限られていることを理解し,施設の状況に合わせた対策を講じていかなければ,対策の継続性は困難になるであろう。
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