調査研究
学生確保からみた推薦入学者選抜試験―看護学生の自我同一性の考察から
濱野 香苗
1
,
竹熊 麻子
1
,
井上 悦子
1
1佐賀医科大学医学部看護学科
pp.124-131
発行日 2000年2月25日
Published Date 2000/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902210
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平成6年の少子・高齢社会看護問題検討会報告書1)において,看護の分野に優秀な人材を確保するために,看護基礎教育の充実の必要性があげられた.大学等高等教育の充実にむけて看護系大学の整備が促進され,多くの大学が設立されている.それに伴い,これまで看護婦教育の主流であった看護婦養成所では,優秀な学生の確保を模索し,その一つの方法として推薦入学者選抜試験(以下推薦入学とする)を導入しているところがみられる.推薦入学についての先行研究では,推薦入学とエゴグラムや職業興味検査との関連2)や成績との関連3,4)には言及されている.しかし,多くの看護学生が属している青年期の発達課題である自我同一性と推薦入学の関連についての研究はみられない.
自我同一性はエリクソン(Erikson E. H.)によって提唱された概念である5).エリクソンは自我同一性とは「自我が特定の社会的現実の枠組みの中で定義されている自我へと発達しつつある確信の感覚」といっている.青年期を,社会的・対人関係の変化に重点をおいた人生の周期における発達課題の漸成図式の5段階に位置づけ,解決すべき心理・社会的危機として自我同一性をあげている.青年が危機の克服をプラスの方向に解決すれば,自我同一性達成の感覚をもち,マイナスの方向に解決すれば自分を見失い,役割の混乱つまり自我同一性の拡散が起こると述べている.
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