連載 論より生活・1【新連載】
誇りを支える
頼富 淳子
1
1(財)杉並区さんあい公社
pp.76-77
発行日 2000年1月25日
Published Date 2000/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902200
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有償ボランティアの活動をしている男性協力員のAさんから次のような通信をいただいた.
──片麻痺のある高齢者の方につきそって,施設入浴サービスを利用しに行ったときのことです.送迎バスから降りたとき,年配の女性職員が待っていて「車椅子を使いませんか」と聞かれました.彼は「大丈夫,歩きます」と言って私が介助しながら浴室に行きました.そこでさらに「では来週からは車椅子でいいですね」と言われたのですが,彼は「いや,車椅子を使うと歩けなくなるから歩きたいんだ」と拒否しました.ところが入浴後に,当日の担当看護婦さんから「施設入浴は時間が決められていて,時間どおりにスムーズに運営するために,これから全員車椅子で移動してもらうことになった.車椅子を使うと歩けなくなるのが心配ならば,自分で公園に行くなり,散歩でもして下さい」といわは最後通告のように言われました.(その看護婦さんは上司から言われたので仕方なく言っているようでしたが.)彼は「どうせ役所や施設などというところは色々決めたがるものだ」と苦笑いしていました.私も不満でしたが「歩ける人は今後,施設入浴の対象にしない」などと逆襲されると困るので黙っていました.玄関から浴室まではせいぜい20メートル程度,もちろん競争をすれば車椅子の方が早いでしょう.でも,普通は車椅子もゆっくり押すから彼が歩く速度とそれほど変わらず,20~30秒の違いだと思います.ある特別養護老人ホームでは,トイレに誘導する手間を省くために,時間を決めておむつを取り替える.そのために自力排尿できた人が急激に駄目になるとも聞きました.
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