連載 教育と研究,臨床をつなぐメッセージ やっぱり私は,看護師だった!・3
小さくても大切な誇り
那須 あい
pp.233
発行日 2011年3月25日
Published Date 2011/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101710
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カランカラン,外来ベッドから鈴が鳴る。「あのぉ,点滴いつまでですか? トイレに行きたいです」と,数時間前に吐き気と下痢で来院し500 mLの輸液を開始していた患者から尿意の訴えがある。点滴残50 mL,心・腎関連の既往歴なし。来院時にみられた口唇乾燥も改善し,顔色もよくなっている。腹痛もおさまり,飲水もできそう,今は,便ではなく尿が出そう。輸液開始時にとった採血データをみると炎症所見はごく軽度。もともと膝がやや悪いのか杖歩行で来院した患者だ。これは,もう脱水は改善している,水分摂取もいけそう。点滴抜いて,杖歩行でトイレに行けるようにしたほうが楽だよね。同僚にも聞こえるように言うと,笑顔でOKサイン。よし,医師にコールしよう!「先生,○○さん,点滴残50で尿意なんです。水も飲めそうです。データで炎症もなさそうで,杖もついているから,点滴抜いてトイレに行ってもいいですか?」抜針トイレ歩行! やったね! 同僚にVサイン。早速実行。
教員生活の15年間,実習やフィールドリサーチで現場に出続けたけれど,看護師としての自分の判断にどれほど確信があっても,医師との直接交渉権もなく,どんなことも,現場の看護師の承認を得なければ実施できなかった。
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