連載 病原微生物・見方をかえたら・10
麻疹
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.79
発行日 1997年1月25日
Published Date 1997/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901552
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ハシカの主要な症状に皮膚の発疹があります.またB型肝炎には肝細胞の障害に由来する黄疸があります.また多くの感染症では発熱などが伴うことが普通です.このような症状というのは治療の対象とすべきもので,早く取り除いた方がよいように思われます.しかし,一見,不快な,いろいろな症状が宿主の抵抗力が健全であることの証明となっている場合が多くあります.咳やクシャミや鼻汁や下痢は,感染症や伝染病とは無関係に日常よく生じることです.これらの反応は有害な異物を排除するための反応です.もし気道に異物が入って来た場合,この咳やクシャミが起こらなかったらもっとひどいことが起こる可能性があるでしょう.
これらの排除反応は機械的なものといえます.はじめに挙げたいろいろな症状も排除反応の1つと考えられますが,これらの物は免疫学的排除反応とよばれます.これらの症状もそれ自体は不快なものですが,もし生じないとすればその患者の病状は重いといえます.
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