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麻疹
多田 瞭之助
1
1国立東京第一病院小児科
pp.13-17
発行日 1961年3月15日
Published Date 1961/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911275
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歴史
麻疹についての記載はかなり古くにすでにみられており,17世紀にSydenhamによる独立疾患としての記述があり,18世紀中ごろにいたり,Francis Homeは,麻疹患者の血液を健康児の皮膚の掻把した部分に塗布し,人から人へ本疾患を直接に感染させている。1876年,CopenhagenからFaroe群島へ来た人に発生した麻疹は,同島居住民の間に大流行を来し,この流行においてPanumの行なった観察,報告は麻疹に関するいろいろな重要な問題を解明した。
原因
病原体は麻疹ウイルス。感染は患者に接触することによりおこる。伝染力は非常に強い。患者の部屋に短時間いただけでもすぐ感染するし,衝立や障子を通して容易に他の室まで波及する。しかし器物を介しての間接的な伝染はない。この病原体は前駆期から発疹期の始めごろの問,鼻腔,口腔分泌液,血液等の中に存在するが,発疹期の終りごろになると感染力はなくなる。多くの人は一生に一度は罹患して終生免疫を獲得し,2度以上かかることはまずない。乳児期の間は母体からうけた免疫のためかかかりにくく,またかかっても軽くすむ。ことに生後3カ月まではかかりにくい。その後はどの年齢層でも罹患はみられるが,ことに2歳〜6歳に多く,大抵学童期までにかかってしまうので15歳以上では比較的まれである。季節的には春秋,ことに春先に多くみられる。
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