病気のミニ世界史
麻疹
大熊 房太郎
pp.87
発行日 1971年2月1日
Published Date 1971/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915926
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そろそろ麻疹(はしか)の季節になりますが,この病気についての認識は東洋でも西洋でもかなり古くからあり,わが国では一条天皇の長徳4年(998年,平安時代の後期にあたる)に,その症状からおして麻疹と思われる病気が流行したことが記録に残っています。
これが,日本におけるもっとも確実な麻疹の第1次流行であるといわれ,当時は赤斑瘡(あかもがさ)という病名で呼ばれましたが,もちろん,それ以前にも麻疹の流行があったことは十分に想像されます。たとえば,欽明天皇の13年(552年)に百済から仏像が渡来したときに流行した疫病は麻疹ではなかったか……という説もあります(これは現在では痘瘡であったと考えられています)が,記録によると長徳4年から江戸時代末期の文久2年(1862年)までのあいだに麻疹は38回ほどの大きな流行をくり返えしています。
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