講義ノート 新しい在宅看護論精神看護学
現場から考える在宅看護論
在宅看護における高齢者の性
荒木 乳根子
1
1聖徳大学保健センター
pp.984-985
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901499
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■性的いたずらに困惑
訪問看護ステーションで働くKさんは,今日訪問する患者さんY氏のことを考えてため息をついた.Y氏は76歳になる一人暮らしの男性である.脳梗塞の後遺症で言語障害があり,手足に軽いまひがある.高血圧で脳梗塞再発の恐れがあるため,Kさんは,ちゃんと服薬できているかどうか確認し,血圧を計って大丈夫なら入浴介助を,できなければ清拭をする.時にはリハビリを兼ねて散歩に連れ出すこともある.
訪問を始めて3か月,少し親しみが出てきた頃から,Y氏は回らぬ舌で「良い体しているね」「おっぱいが大きいね」等と言うようになった.それには笑って対応していたKさんだが,先週は入浴介助で両手がふさがっている時に,Y氏に胸をつかまれてしまった.とっさに身を離して振り払ったが,互いに気まずい雰囲気になって介助を終えた.Kさんは内心「76歳にもなってそんなことをするなんて,変態じゃないかしら」とも思ってしまう.Kさんは今日もまた同じようなことが起こったらどうしようと,気が重いのである.
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