講義ノート 新しい在宅看護論精神看護学
現場から考える在宅看護論
第1章 高齢者の在宅療養のとらえ方
豊かな生活を支援する
坪倉 繁美
1
1兵庫県立総合衛生学院
pp.952-958
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901493
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人間らしくいきいきと
理想的な歳のとり方,理想的な最期の暮らし方を多くの人は「ぽっくり寺」に求める.さらに「はやくおむかえがきてほしい」などと口にする.これらの思いは「ねたきり」「ぼけ」に対する恐怖や,個人の尊厳が失われて生かされていることへの恐怖であろう.決して,ぽっくりと早く死にたいわけでもない.「ぽっくり寺」の信仰は天寿を全うすること,厄よけと大往生である.参詣者の共通の思いは,最期まで苦しまず「人間らしく生きたい」という内なる叫びの逆説的な言い訳にすぎない.
現在の高齢者の生活を知るためには,文化や習慣によって形成された高齢者の心情を理解しなければならない.生活は地域ごとの特徴をもち,また各家族ごとに歴史をもっている.加えて家族の人間関係は実にダイナミックに変化し,きわめて複雑で個別的である.
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