とびら
昨日より豊かに
pp.4
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912515
- 有料閲覧
- 文献概要
柳の枝がやわらかい緑の糸を垂れ,丁字の芳香が暗の中でもその存在を明らかにするようになると,例年のことながら羽田も横浜も忙しくなつて,東京をはじめ,日本の各地に青い眼のお客様が日増しに殖えていくようになります。大ていの人が,初めての来日でしようから,そのうける印象も強く,想い出となるものも多くのこることでしようが,日本人の一人として,ぜひみてほしいものと,ねがわくば見逃してほしいものと,私共の生活の中にあることを,何とかして,みてほしいものばかりにしたいものだと思うのは,私一人ではないでしよう。
私もこの時期になると,必ず何人かのお客様を迎える習慣になつています。今年の最初のお客様は,私が直接知り合つている人ではなくて,アメリカ人の私の友人の知り合いで「東京にいつたら私をたずねなさい,逢つて下さい」といわれてきている人でした。このようなケースは決して珍らしくありません。突然電話がかかつて来て,「私は○○という者ですが,あなたの知人の××さんの友人です。あなたに一度おめにかかりたい」などといつた具合につながるわけです。外国での生活の中で,本当に親切にしていただいて来た経験ばかりをもつ私としては,そのお返しのような気持で,出来るだけのことはしてあげたいといつも思い,無理してでも何とかしているわけです。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.