特別講義
医療の本質としてのケア
日下 隼人
1
1武蔵野赤十字病院小児科
pp.380-384
発行日 1994年5月25日
Published Date 1994/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900844
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はじめに
近代医療は主に自然科学の論理によって動かされてきたし,現在もそのことに変わりはない.確かに,これまでの自然科学の実績は大きく,その本来的な有効性は依然として重要なものだが,今日の医療をめぐる多くの問題もそのことに端を発していると考えられないだろうか.自然科学的な「知」が医療の根底に不可欠であることは疑いがないが,「人が病み癒える」ということは本質的には自然科学的手法ではとらえきれない文化的な事象である.医療とは常に「人が人を援助する」という関わりのダイナミズムの上に成り立つ動的な事象であり,自然科学的な知をその1つの柱とはしているけれども,人文学的=人間学的な視点によらなければ包括的にはとらえられない.考察さるべきは,1本の柱の質に拘泥することなく,私たちが囲む「1人の病者の生きる時間と空間」の質でなくてはならない.
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