特集 上手な論文発表のしかた
学会発表の基本的考え方とその実践―実りある「10分間」を過すために
山田 一朗
1
1札幌医科大学衛生短期大学部看護学科
pp.91-101
発行日 1992年2月25日
Published Date 1992/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900336
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本稿を書くきっかけ
昨年(1991年)行なわれたある看護系の学会で,筆者はきわめて印象的な体験をした.筆者らの研究グループは「看護記録用語の特殊性」というテーマの下に,いくつかの視点から検討を行ない発表した1-4).内容をごく簡単に紹介すると,実際の看護記録の中から,語法・文法的に問題のある記載を抽出し,そのような用語がどれくらいの頻度で使われているかを調べ,同時に用語の利用頻度に影響を与えている因子について解析を行なったというものである.
図1は,その時の発表で実際に用いたスライドのうちの1枚である.左側にある「助詞省略」「文語的表現」「外来語省略」の3つは,記録用語の特殊性を分類するための基準である.(具体例は後に示す.)それに対して右側にある「看護婦」「患者」「勤務帯」の3つは,上述した用語の利用頻度に関わる影響因子である.この図では,「患者」だけが太線で囲まれ,左側の3項目と実線でつながっている.これは「記録の対象となる患者が異なると,特殊用語の利用頻度も異なる」という仮説が支持されたことを表わしている.一方,「看護婦」「勤務帯」の2つは点線で囲まれ,しかも左側に行く途中で線が途切れている.これは「記録する看護婦が異なっても,あるいは勤務帯が異なっても,用語の利用頻度には影響していない」ことを意味している.別の言い方をするなら,「看護婦が誰であろうと,どの勤務帯であろうと同様に使っている用語」ということになる.
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