焦点
看護の視点で考える健康格差と健康の社会的決定要因―誰一人取り残さない「健康格差の縮小」へのアプローチにつながる看護学教育へ
岡本 美代子
1,2
,
松田 結
1,3
,
浅川 翔子
4
,
岩間 裕司
5
1順天堂大学大学国際教養学部
2順天堂大学大学院医療看護学研究科
3School of Nursing and Health Studies, University of Miami
4東京慈恵会医科大学医学部看護学科
5防衛医科大学校医学教育部看護学科
pp.700-707
発行日 2024年12月25日
Published Date 2024/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202331
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なぜ今、「健康格差」が看護学において注目されているのか?
保健政策の動向と日本社会の「健康格差」
2024年4月より、厚生労働省は「21世紀における第五次国民健康づくり運動〔健康日本21(第三次)〕」をスタートさせた。このビジョンでは、「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」が掲げられており、それに向かうために、1)誰一人取り残さない健康づくりの展開(Inclusion)、2)より実効性をもつ取組の推進(Impletentation)が挙げられている1)。このビジョンを支える4つの基本的な方向として、①「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」、②「個人の行動と健康状態の改善」、それらの土台としての③「社会環境の質の向上」、そしてそれらが、胎児期から高齢期に至るまでの④「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」につなげられている[図1]2)。このように、今日のわが国の保健施策の方向性の最上位の一つに掲げられている「健康格差」は、2013年の健康日本21(第二次)で初めて提示された。
この健康格差の概念が、近年どのような経緯で日本の保健政策に組み込まれてきたのかを紐解いてみよう[表1]。1947年に施行された日本国憲法第25条に「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」3)と規定している。そして、1961年の国民皆保険体制をはじめとする社会保障制度の整備や公平で一定の水準を持つ公衆衛生の向上が、世界一の長寿社会の実現に寄与してきた経緯がある。
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