特集 誰一人取り残さない看護教育を目指して
学生エンゲージメントと心理的安全性―学生の自立を促す支援と仕掛け
山田 剛史
1
1関西大学教育推進部
pp.278-282
発行日 2024年6月25日
Published Date 2024/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202246
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はじめに:読者への3つの問いかけ
本題に入る前に、読者のみなさんに3つの問いかけをさせていただきたい。
1つ目は、学生教育・指導を行う際に、どのようなことを重視しているか。試験で良い成績を取ること、国家試験に合格すること、看護師として職に就くこと、はたまた、一人の大人として自立し健やかに生きること。どれも大切ではあるが、自分の中でどこに最も比重を置いているかで教育・指導の在り方も変わってくる。
2つ目は、目の前にいる学生をどのような存在として見ているか。大学生は法律上「成年」として扱われるが、社会に出るための猶予期間(モラトリアム)を過ごす「青年」でもある。この期間にさまざまな経験に傾倒(コミットメント)し、心理・社会的な自立を遂げる。
3つ目は、普段、学生に対してどのような関わり方をしているか。答えを教える、代わりにやってあげる、好きにやらせる(放任)など。近年では、大学の経営戦略とも相まって「面倒見の良い大学」が掲げられ、学生への過干渉や過保護とも取れる関わりが増えてきている。
この3つの問いは、学生エンゲージメントを語る上で外せない重要な問いとなる。ぜひ、ご自身の中で問うてみてほしいし、同僚らと話してみてほしい。筆者が学生エンゲージメントに着目した経緯はこれまでに詳しく論じているが1)、どのような制度や仕組みであれ、また、素晴らしい教授法やICT(Information and Communication Technology)ツールであれ、とどのつまりは「学生にどう関与するのか」という問題に帰着する。
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