Japanese
English
特集 糖尿病こころと行動のキーコンセプト
「形」からはじめるエンパワーメント
Putting patient empowerment into practice
大橋 健
1
1東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科
キーワード:
①エンパワーメント
,
②治療同盟
,
③振り返り
,
④エンパワーメントの5つのステップ
Keyword:
①エンパワーメント
,
②治療同盟
,
③振り返り
,
④エンパワーメントの5つのステップ
pp.441-445
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100978
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
□エンパワーメント=「能力開化」
エンパワーメント(empowerment)とは,医療者と患者の対等なパートナーシップに基づき,患者が本来備えている自己管理能力と自律性を最大限に引き出すべく支援することである1).「本来備えている」という部分が重要であり(原著では“innate ability”とある)2),つまりは相手を元々「できる存在」ととらえることにほかならない.国語研究所はエンパワーメントの訳語として「能力開化」を提唱しているが,エンパワーメントの理念を的確に表現している.エンパワーメントは従来,「権限委譲」と訳されることが多かった.そのため,元々医療者側にある治療に関する「権限」を,患者に「譲渡」すること(たとえば,患者自身によるインスリン単位の調節を許可すること)がエンパワーメントであるという誤解が生じやすい.しかし,そのような誤解は,本来のエンパワーメントの理念の対極にあるものだ.
日常,私たちは患者に対して「何をするべきか」(Doing)ばかりを考えがちだが,エンパワーメントは,私たちが「どうあるべきか」(Being)という基本的スタンスを問うものである.もし,相手を「できない存在」と考えるのなら,「教える」,「アドバイスする」,「あなたがどうすべきか私(医療者)がいちばん知っている」という関わりになるだろう.では,相手を「できる存在」と考えたら,どんな関わりになるのだろうか.本稿ではあえて,エンパワーメントのための技術(スキル)に焦点を当ててみたい.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.