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はじめに
成績評価のための試験をどうするかは、コロナ禍で注目された高等教育の課題の1つでした。キャンパスなどへの入構制限が行われたり、感染対策の観点から教室の座席間の距離をとることによって通常よりも座席数を確保できなかったりする状況で、現場ではさまざまな試行錯誤が重ねられました。すべての試験を取りやめて、原則としてレポート形式での評価とした大学もありましたし、LMS(Learning Management System)などを利用したWebテストを、なるべく不正行為が起きないように、制限時間つきで実施したり、テスト実施中もWebカメラで監視をしたり、あるいはAIを活用して受験者の顔や視線の動きを分析する不正検知システムを導入したところもありました。しかしながら、その対応のいずれもが、なにかしらの限界をかかえており、試験だけでも教室で実施させてほしい、という教員からの切実な要望が多く寄せられていた実態もありました。
この状況で問われたことは、まさに「良い」教育評価を行うためにはどうすればよいのかということでした。単に公平・公正な試験環境を求めるだけでなく、制約的な状況下で教育目標や教育内容に照らしてふさわしい試験をいかに実現するか。1人ひとりの教員が、そうしたことを自問自答しつつ模索していたように見受けられました。
このことは、試験とはいったいなんなのかをあらためて問い直す契機が訪れたということもできるでしょう。この貴重な機会を活かすべく、本稿では、コロナ禍以前の筆記テストに立ち返って、そもそも良い教育評価のための筆記テストとはどういったものなのかということについて、理論編と実践編の2回に分けて、基本的な部分を確認していこうと思います。
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