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2008年の指定規則改正で、医療安全の基礎知識の修得が看護基礎教育に盛り込まれることになって久しいが、そのカリキュラム上の位置づけや教育方法については依然として各教育機関に任されている。このような医療安全教育が体系化されていない状況は、学生の基礎知識の修得や、教授する教員の教育スキルに影響を及ぼしているものと推測される。この問題意識をもとに、筆者らは、医療の質・安全学会の学術集会等の場を活用して、看護職の医療安全教育の在り方をめぐる検討を続けている。
2016年の学術集会では、“看護基礎教育から始める医療安全教育”のセッションにおいて、筆者は「臨地実習に活かす医療安全教育―卒後への助走」と題し、「安全」の概念が複数の専門科目の教育内容のなかに組み込まれている島根大学の、学年進行に応じて知識を統合し積み上げていく医療安全教育の実例を紹介した1)。そこでは、従来の安全教育は、対象者に提供する看護技術のスキルのなかに位置づけられ、根拠に基づく安全な看護技術の習得に重点が置かれてきたが、カリキュラムのなかに、システム整備による安全保障の考え方、組織横断的・包括的マネジメントとしての医療安全管理の理念と方法の学習を位置づける必要があることを提起した。同じく2017年には「学生の失敗は病院の宝―実習関連のインシデントを病院の医療安全に組み込む」と題して、学生の失敗が臨床指導スタッフだけでなく、教育推進責任者から医療安全システムにフィードバックされた事例を紹介し、安全な実習環境をつくり、医療安全文化醸成の位置役を担うという観点からの教員の役割を提示した2)。その際に、インシデントを体験した個々の学生への対応は教員次第であり、学生の医療安全力を育むためには、まず、教員自身の医療安全教育力が問われるべきではないかと問題が提起された。その問題提起を受けて、2018年には、教員自身の“医療安全”に対する見方・考え方、態度および、医療安全教育力とは何かに焦点をあてて、学生と医療安全に向き合うことの意味を模索した3)。
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