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はじめに─実践カリキュラムをいかに構築するか
“事故の時代”といわれる今日,人々の医療事故のリスクに対する認知の高まりを背景に,患者本位の質の高い医療と安全を保証するシステム構築への取り組みが日々重ねられている。
看護研修研究センター(以下,当センター)では,看護基礎教育における医療安全教育推進に関わる研究に2000年から取り組み,医療安全のためのシミュレーション教材を用いた教育方法を開発し1),「医療安全」を科目に位置づけた看護基礎教育のカリキュラム構築を提唱してきた2, 3)。さらに2002年からは研究知見を活かして,看護教員を対象とした『医療安全推進のための看護教育研修』および『看護教員再教育研修』を継続的に実施している。この7年間の受講生は,のべ593名にのぼる。これらの研修の成果は既に受講生によって,事故予防のためのシミュレーション教材を用いた授業や医療安全の科目における教育実践として報告されている。
今般,看護基礎教育において,「看護基礎教育の充実に関する検討会」報告書に基づき,看護実践能力の強化を図るために教育課程改正が実施される。これに伴い,看護基礎教育の内容や方法および看護教員の資質向上などの具体的な検討が進められている。看護教員には,国の規準である改正教育課程を自校の教育目的に即した効果的な実践カリキュラムに編成し,確かで創造的な教育活動を展開することが期待されている。
今回の改正で位置づけられた統合分野の「看護の統合と実践」に含まれる「医療安全の基礎的知識」は,安全で質の高い医療システムの構築という社会的要請と医療安全学の確立という学問的要請に応える新たな教育内容である。2003年の看護師養成所実態調査4)では,独立した科目に「医療安全」を位置づけて教授している養成所は4%弱とわずかであった。それゆえ,何らかの形で取り組んではきたものの,自校のカリキュラムに「医療安全」の内容を明確に位置づけるには,新たな学究が看護教員に求められることは否めない。
本稿では,当センターの知見をもとに,「医療安全」の教育内容を実践カリキュラムとしてどのように構築するのかについての考え方を述べる。今後,改正教育課程にもとづく自校のカリキュラムを構築するにあたり,検討材料の一つとして活用していただければ幸いである。併せて,看護教員の教育研修を企画する立場の方々からの問い合わせにも応え,研修プログラムの一資料として,『看護基礎教育における医療安全教育推進のための看護教員研修』の内容を紹介する。
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