連載 医療通訳inバンクーバー・9
医療通訳は言葉と文化の仲介者
高橋 麻貴子
1
1Trans Med
pp.1050
発行日 2019年12月25日
Published Date 2019/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201389
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私たち医療通訳の仕事は言葉の壁を取り除き、会話をスムーズにすることです。ときには、異なる文化や立場の人たちの間に入り、コミュニケーションをつなぎます。しかし、お互いの言ったことを正確に訳していても、習慣や文化の違い、あるいはちょっとした言葉のずれで、対話が円滑に進まなくなることがあります。今回はそんなエピソードをいくつか紹介します。
日本人の方から「高熱が続き歩くのも困難」という連絡があり、すぐに緊急病院へ連れて行きました。その患者さんは寒気がすると言ってガタガタふるえ、自宅から電気毛布を持って来ていました。しかし、それを見た看護師は「熱があるなら毛布はいらない」と言うのです。また、医師は診察後に「冷たいシャワーを浴びたり、水風呂に入ったりしなさい。そして冷えた飲み物を飲みなさい」と言いました。カナダでは「熱があるなら、とにかく体を冷やす」というのが常識のようです。このように、患者さんが日本の習慣とは異なることを言われたときは、カナダの文化や発言の意図を説明します。また反対に、カナダの医師に日本の事情を伝えることもあります。
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