特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか
各論:思い出のミミッカー症例
知っていることも時に罪
三澤 美和
1
1大阪医科薬科大学病院総合診療科
キーワード:
無疹性帯状疱疹
,
ZSH
,
Pancoast症候群
,
Horner症候群
Keyword:
無疹性帯状疱疹
,
ZSH
,
Pancoast症候群
,
Horner症候群
pp.1684-1689
発行日 2023年9月10日
Published Date 2023/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229141
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暫定診断が想起されるまで
症例 76歳男性.
10年以上,高血圧・脂質異常症,肺気腫にて通院していた.既往歴に68歳のとき胃癌があり,規模の大きい総合病院で幽門側胃切除術を受けていたが術後経過は良好で,食事摂取なども問題なく経過していた.妻を亡くしており一人暮らしで,現在は無職である.75歳のときから1年以上続く倦怠感,肩が凝る感じを主訴にX年Y月,当院総合診療科に紹介されてきた.酸素飽和度を含むバイタル所見,一般的な採血やX線検査では大きな異常がなかった.日中の倦怠感や時々感じる肩や首の緊張症状以外は特に症状がなく,夜間良眠,食欲も十分あり体重減少もみられなかった.もともと性格的に非常に几帳面で細かいことを気にするところがあり,診察時には多くの質問や症状の説明に終始し診察時間が予定より長引くことも多くあった.総合診療医としては,「パッとみてわかる疾患」以外に隠れているものがないかを探す必要があると考え,甲状腺機能低下,副腎皮質機能低下,悪性腫瘍の除外などを行った.採血や負荷試験でも特記すべき異常は見つからず,上部消化管内視鏡検査,便潜血検査,胸部〜骨盤部の単純CT検査でも大きな異常がなかった.またうつ状態などの精神疾患も否定的だったが,症状の原因を究明することに関してはやや強迫的な面もみられた.
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