連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・7
腸腰筋─腹の中の力持ち
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.521
発行日 2018年7月25日
Published Date 2018/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201013
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腹部の壁を構成する腹筋は,腹筋運動が胸郭と骨盤を近づけることからわかるように,体幹の筋です。腹筋は体表にあるので健康的な身体の象徴でもあります。腹部の深部にも別の筋があり,大腰筋と言います。この筋は腹部にありますが腹筋ではありません。大腰筋は腰椎の両側から始まって大腿骨の上部の内側へ向かいます。つまり,股関節から大腿を曲げさせる,下肢の筋なのです。また骨盤の内壁には腸骨筋があり,両筋は合流して腸腰筋と名前を変えて大腿骨に付きます。これらの筋は,脚を持ち上げるほど強大な筋ですが,外からはほぼ見えません。そのため美術解剖ではあまり取り上げられませんが,人間の直立二足歩行を支える“腹の中の力持ち”として,外すことはできません。
粘土造形では2つの筋をつくります。まず腸骨筋を骨盤の内壁から大腿骨の上部内側後方へ付けます。次に長い大腰筋を腰椎の側面から付け,下側は骨盤から出るところで先の腸骨筋と融合させます。この筋が骨盤下部で“く“の字に曲げられるのを確認してください。最後に,細いひも状の粘土を骨盤の上前腸骨棘から恥骨結節まで這わせ,これを鼡径靱帯とします。筋はこの靱帯の下をとおって骨盤から出るのです。
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