連載 看護関係の心理・8
病院内退行と患者同一性
小此木 啓吾
1
1慶応義塾大学医学部
pp.1040-1044
発行日 1973年8月1日
Published Date 1973/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916735
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職業は患者
‘あなたのおすまいは?’‘○○病院’‘いや,あなたのご自宅はどこかと聞いているのです’‘はい,患者です’こう答えた患者さんの話があるが,実は精神科病院には,真剣にそう考えている患者が少なくないのである.
つい2,3日前も,私は某精神病院に長期入院している慢性分裂病の患者さんの診察を頼まれたが,その家族は,その病院への入院が長びくばかりなので,家庭復帰,社会復帰を促進させたいが,何かよい方法はないものか,と患者を退院させて,自宅に連れもどったのである.そして私に‘もっと,どんどんよくなるような病院を紹介してください.あるいは,もっと本人が,積極的になるような治療方法を教えてください’と依頼してきたのである.
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