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まっとうな支援
オープンダイアローグの内容を知ったとき,直感的に「そりゃ,効くでしょ」と思った。オープンダイアローグの内容については提唱者のSeikkulaをはじめ多くの文献があり1─3),川田氏の記事にも述べられているが,その基本となる「助けを求められたらすぐに対応し(ミーティングを行う),必要とされる限りかかわり続ける」「当事者を含む関係者すべてが尊重される」については,議論の余地なく「そうあらねばならない」ことである。また,不確かさに耐え患者・家族と共にあること,治療的な対人的プロセス4),患者・家族の内なる力を引き出すこと5),安全で安心な居場所づくり,小さなサインを見逃さないモニタリング機能6),患者の感情に巻き込まれながら自分の身体をケアの道具として使うことは,看護の専門性を成し,看護職者がこれまで当たり前のように行ってきたことである。エビデンスなど示されなくとも,看護職ならそれを納得し実感できる経験を山ほどもっているに違いない。オープンダイアローグを実践しているケロプダス病院のファミリーセラピストの構成が,医師8名,心理士8名,看護師68名と看護師が圧倒的多数であることもうなずける7)。24時間の電話受付は看護師が担当し,電話を受けた者がケース責任者となるルールなので,看護師がケース責任者としてコーディネータの役割を担っているのであろう。ユマニチュードが紹介されたときも同じ思いをもったのだが,その多くの行為は,看護師たちが,患者を癒すケアとして日々実施してきたことである。ただ,私たちは,それを積み重ねて体系化し,概念化して,その意義を社会に示す努力はしてこなかった。自分たちのケアの実践のなかにある意義を振り返り概念化し発信していくことは今後の課題である。
もちろんオープンダイアローグは,複数の盤石な理論8─11)を基に,30年以上もの試行錯誤の末に導かれている革新的な精神医療の手法であり思想である2)。その治療法がスタンダードになることを切に願うが,その考え方は,精神医療にとどまるものではなく,すべての医療に通じるもので,現在の医療の在り方そのものにパラダイムシフトを突きつけているのだと考える。そのような意義あるセミナーひょうごオープンダイアローグを学ぶ会と兵庫県立大学臨床看護研究支援センターで主催できたことに感謝している。それは,ひとえに地道に努力を重ねてきたひょうごオープンダイアローグを学ぶ会の方々と訪問看護ステーション,明石市福祉課,家族会など地域の方々の力の賜物である。そして,そのように当事者そして地域や行政が同じ場を共有し,開かれた対話を重ねることが,社会・生活環境による今日の健康問題を解決する糸口なのだと信じる。たぶん唯一の。
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