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はじめに
人口構造の変化や疾病構造の変化,そしてそれに伴う医療制度改革が進んでいます。社会保障の充実・安定化と,そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目標とする「社会保障と税の一体改革」では,2025年に目指すべき医療提供体制を実現するために,さまざまな取り組みが展開されています。その1つである一般病床の機能分化の推進は,看護学生の実習場所確保に,少なからず影響を及ぼしています。
それぞれの地域の医療計画を策定する都道府県は,その実情に応じた医療機能を整備することとなり,ある地域に急性期病床が供給過多と判断すれば,それを削減することになります。これまで急性期看護領域において実習していた施設であっても,医療機能が変更されることで実習ができなくなる可能性があります。そのため,学生のための実習環境をどう確保していくかがすでに大きな課題となっており,特別な配慮をもって指導を行っている教員の方々も少なくないのではないでしょうか。
高度急性期病院であれば,在院日数が短くなるため継続して患者を受け持つことが難しい状況がありますし,高齢の患者の入院ではこれまでに必要とされた能力に加え,高齢であることをふまえたさらなるケアを提供する能力が要求されます。
さらに出生率の低下は,受け持つ対象者が減少していることを意味しており,母性看護実習や助産学実習に影響を及ぼしてもいます。助産学実習では,実習中分娩の取り扱いについては,学生1人につき10回程度行わせることが,学校養成所指定規則に定められていますが,その数を確保することが困難な状況にあります。実際に,看護教員から,母性看護実習をさらに少なくすることができないかとさえ相談されることもあります。こうした状況のもとで,臨床指導者も看護学生の到達目標に向かってさまざまな工夫をしながら,実習環境を整備しています。実習環境には体制を構築し整備することや,患者と学生の関係性を維持していくことの支援や,学生が学ぶ物理的な環境の整備ももちろん含まれます。
そこで,日本看護協会(以下,本会)では,助産実習環境の確保などのために,助産師出向システムの提案を厚労省へ行ってきました。その結果,2013(平成25)年度・2014(平成26)年度の2年間にわたって,モデル事業を実施することができました。
本稿では,なぜ助産実習確保のための出向システムを提案し,モデル事業を行ったのか,またこの出向システムは,今後どのようになるのか,その展望について述べさせていただきます。
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