焦点
患者取り違え「手術」事件を考える—横浜市立大学医学部附属病院事件・磐城共立病院事件・熊本市民病院事件における看護師・医師の責務について
清水 昭美
1
1前大阪大学医療短期大学部
pp.201-207
発行日 2004年3月25日
Published Date 2004/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200174
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はじめに
2003年3月25日,横浜市立大学医学部附属病院患者取り違え「手術」事件の東京高裁判決があった.判決で裁判所は,「患者本位の医療という姿勢に欠けている」と評し,「被告人らのこの点の自覚の乏しさはあきれるほどである」と厳しく述べた.大規模な病院では患者取り違え防止について,「本来病院全体として組織的に確実なシステムを構築すべきである」と述べ,被告人全員を有罪にした1).事件から4年2か月後の判決である.
1999年1月に起きたこの事件より前にも,患者を取り違えて「手術」した医療過誤事件は起こっている.それらはたまたま大きく報道されなかったから,その過ちを後世に生かすこともできなかったのだろうか.1987年の磐城共立病院,1992年の熊本市民病院の事件である.これらの事件から学ぶことで,横浜市立大学医学部付属病院の取り違えは避けられたのではないか.3つの取り違え事件を他人事とせず,生命をあずかる医療職,なかでも看護師・医師の責務について考察し,轍を踏まぬよう今後に生かしたいと考えた.
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