特集 横浜市立大学病院患者取り違え手術事件から何を学ぶか
横浜市大病院患者取り違え手術事件の控訴審判決とは―本判決の全容とその論理
岩下 雅充
1,2
1看護判例研究会
2筑波大学大学院社会科学研究科博士課程
pp.693-700
発行日 2003年9月10日
Published Date 2003/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100895
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
本判決をどうとらえるか
医療そして,看護のあり方等に多大な影響を及ぼした裁判例がいくつかある。看護について言えば,その代表的なものの一つとして,昨年9月30日に発出された医政発0930002号によって廃止されるまで,約50年間にわたり,「静脈注射は看護師の業務の範囲を超えるものである」との行政解釈(昭和26年9月15日医収第517号)を引き出す契機となった「国立鯖江病院事件」がある。
そして,1999年1月に起こった横浜市立大学医学部附属病院(以下,横浜市大病院)患者取り違え手術事件も,間違いなくそのうちの一つとして位置づけられることになろう。なぜならば,本判決(というよりは,本事件)は,医療事故防止対策あるいは安全対策を本格的に講じなければならないという認識を,行政を含め社会全体に植えつける契機となった事件(裁判例)であったからである。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.