時評
病院乗っ取り事件の横行
宮森 正
1
Tadashi MIYAMORI
1
1川崎市立三田病院
pp.452
発行日 1988年5月1日
Published Date 1988/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209301
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西日本を中心とした「新日本医療サービス」によるモグリ医療金融,病院乗っ取り事件はテレビなどで詳細な報道がなされているが,寒心なくして見られるものではなかった.この事件の直接の違法行為は,病院経営コンサルタント会社が,経営難に陥った医療機関の経営相談に応じて診療報酬を担保としてモグリ金融を行った貸金業規制法違反,出資法違反であるという.
しかし,問題はこうした違法行為だけにとどまらない.戦慄すべきは,融資した病院に対し病院経営援助と称して事務長を派遣し,会社に対して手形を乱発させて更に負債を増加させ,ついには病院を乗っ取るという図式で,多くの病院が被害にあったことである.経営難に苦しむ病院長たちはやすやすとモグリ金融を受け入れ,事務長派遣をしてもらい彼らのくい物になっていたという.更に,身ぐるみ奪われ借金づけになった元院長を,医師不足にも悩む他のこうした経営難の病院に斡旋して働かせていたというのであるから恐れ入る.こうした徹底した乗っ取り工作により,十数か所の病院が経営権を握られていたという.借金の取り立てに悩んで自殺した院長もいたらしい.三面記事的で陳腐な事件かもしれないが,病院のおかれている状況の象徴のようで見過ごすことができなかった.
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