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はじめに
「教育力」というキーワードを聞き,読者の皆さんはどのような力をイメージされるだろうか。多くは自身が経験してきたキャリアに影響を受け,そこでその概念は形成されると思われる。
私は,2014(平成26)年4月に公益社団法人大阪府看護協会(以下,協会)の現職に就任したが,それまでのキャリアは看護管理者として組織運営を担い経営に責任を負う立場であった。前職時,私がもっとも価値を置いてきたのは次世代リーダーの育成であった。なぜなら経営とは組織の永続性を探求することであり,業績や財を残すこと以上に人を残すことが真に組織が成長し続いていくことにつながると考えるからである。これらの経験からの気づきは看護の価値を探求するひたむきさをもち,かつ,他者の成長を支援できる能力を備えた管理者・教育担当者・実地指導者などのコア人財がどのように成長発達していくか,つまり人を育てる「教育力」はいかに学ぶことができるかという問いに,多くの示唆を得るものだった。
今回の内容は,組織内で長期的なかかわりにより支援ができる場とは異なり,協会という社会教育施設で比較的短時間で集中的に教育を行う場での工夫と未来への糸口についてである。実際,就任後に耳にする内容は専任教員養成講習会(以下,講習会)の修了生が,さまざまな理由があるにしても,「教育力」を基礎教育現場で十分に発揮できていないのでは,といった声である。修了生が基礎教育現場で心折れず,さまざまな抑止力にも対応していくための意志と人間力を育む土台を,講習会の8か月の教育課程で培っていくことが,今の私の使命である。
看護「教員」という特性をふまえたうえで改めて,教育する力とは何かを再考し,人の成長支援にこだわって述べてみたい。
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